オーガニックとは有機栽培のことで、人体や地球環境に優しい農業スタイルを指します。
では、そのオーガニックと完全無農薬なら、どちらが安全で環境に優しいのでしょうか?
国の調査では6割以上の人が「オーガニックより無農薬のほうが安全そう」というイメージを持っています。
ただし、これはちょっと間違ったイメージなんですね。
本当に安全な野菜や食品を選ぶために、無農薬とオーガニックの違いを説明したいと思います。
最初にまず、オーガニックと無農薬の違いを表にまとめますね。
オーガニック | 無農薬 | |
---|---|---|
化学農薬 | 不使用 | 決まった基準がない |
遺伝子組換え | 禁止 | 規制なし |
化学肥料 | 禁止 | 規制なし |
表示マーク | 有機JISマーク | 特になし |
国の基準 | 農林水産省の基準 | 無農薬の表示自体が禁止 |
違うポイントは5つ、農薬の基準、遺伝子組換えや化学肥料の禁止、表示マークの有無、国の基準です。
比べてみると、オーガニックのほうが基準が厳しい事がわかりますね。
対して無農薬はかなり曖昧、しかも国からは「無農薬と表示して売っちゃダメ」と言われているんです。
どうしてそんな事になってしまったのか、まずは無農薬栽培について説明したいと思います。
無農薬栽培とはそのものズバリ、農薬を使わない農業スタイルをいいます。
なんだかナチュラルで体に良さそうな無農薬栽培ですが、実は表示自体が禁止されてしまったんです。
それは無農薬という言葉が、消費者に「農薬ゼロ」と勘違いさせる曖昧な表示だからなんですね。
どういう事なのか、無農薬栽培について説明したいと思います。
実は無農薬という言葉は「まったく農薬を使っていない」という意味ではありません。
土に農薬が含まれていたり、出荷直前は無農薬でも育つ過程では農薬を使う場合もあるんですね。
苗を植えてからは農薬は使ってない、ここ数ヶ月は農薬を使ってない、これも無農薬と言えてしまいます。
この「無農薬だと言った者勝ち状態」が問題になり、ついに国が無農薬という表示を禁止しました。
きちんとガイドラインを作り、農薬を減らした農作物を特別栽培農産物と表示する事に変わったんです。
ガイドラインが出来た平成15年以降、日本国内では無農薬、減農薬という表示は無くなるはずでした。
無農薬に代わる表示が特別栽培農産物ですが、こちらは国で基準が決められています。
特別栽培農作物は農薬だけじゃなく、化学肥料の量も減らす決まりがあるんですね。
実は、農作物は種類ごとに「これくらいの農薬や化学肥料が必要」という平均データがあります。
農薬や化学肥料を平均データの半分以下に抑えた作物が、特別栽培農産物と認められるんですね。
化学合成の農薬を全く使用しない農作物は「節減対象農薬:栽培期間中不使用」という表示ができます。
でも一般の人から見れば、やっぱり何が何だかわからない表示ですよね。
結局は浸透せず、みんな無農薬という言葉を使い続けているんです。
無農薬という表示は禁止になり、特別栽培農作物は表示がわかりにくいのが現状です。
それに対して有機栽培、つまりオーガニックは基準も表示もハッキリわかりやすいんです。
しかも、安全の基準もオーガニックのほうがずっと厳しいので、安心感も違うんですね。
早速ですが、オーガニック栽培と無農薬栽培を比較してみましょう。
有機栽培ことオーガニック農法は、禁止農薬や化学肥料のほか、遺伝子組換えの種子や苗も禁止です。
特別栽培農作物では遺伝子組換えについては触れていませんが、ここは大事なポイントなんですね。
お菓子の成分表示などで「遺伝子組換えでない」という言葉を見た事がある人も多いと思います。
遺伝子組換えとは、他の動植物から取ったDNAと植物のDNAを部分的に差し替えてしまう技術です。
遺伝子を組み替えると、除草剤でも作物が枯れない、害虫が葉を食べただけで死ぬ殺虫性、野菜の日持ちを良くする、作物が病気に強くなる効果が狙えるんです。
まるで夢のような技術ですが、遺伝子組換え植物が野生で増えてしまい、自然環境を壊す危険があります。
そして何より、遺伝子にはまだ未知の部分が多くあるのも怖いところです。
遺伝子組換えによって偶然危険な作物が生まれたり、食べ続ける事で害が無いとは言い切れないんですね。
オーガニックは人々や自然を守るため、遺伝子組換えの種や苗を禁止しているんです。
他にも、有機栽培は過去2年間は禁止農薬や化学肥料を使わない、というのもルールです。
たとえ農薬を禁止しても、土に紛れていると農作物が取り込んでしまいますよね。
クリーンな土でクリーンに育てる、それがオーガニックなんです。
でも化学肥料や農薬の何がいけないのか、あまりピンと来ませんよね。
化学肥料は水に溶けやすく、素早く農作物に栄養を与える便利なアイテムです。
しかし、水に溶けやすいせいで、肥料の成分が畑の外や川に流れ出て環境を汚染してしまいます。
特に問題とされているのが、肥料に含まれる大量の窒素です。
多すぎる窒素はやがて硝酸イオンという物質に変わり、藻の大発生や飲み水の汚染を招くんですね。
井戸水を飲んでいた時代、この成分のせいで赤ちゃんが酸欠を起こした事がありました。
また、藻の大量発生で水中の酸素が足りなくなり、魚や動物が大量に死んでしまう事もあります。
化学肥料は便利ですが、環境の事を考えると要注意な成分を含むんですね。
化学農薬も土や水を汚染する事があり、害虫でない虫や植物を死なせてしまう事があります。
殺虫剤などの影響で虫が死んでしまい、それを食べる鳥や動物が絶滅する事もあるんです。
化学農薬は効き目が強い分、環境への被害が大きいんですね。
そして、農薬がもたらす健康への影響も無視できません。
農薬の安全性チェックは短い期間で行われるので、何年も摂取すると健康への害も考えられます。
体に農薬の成分が蓄積しないよう、できるだけ残留農薬が少ない食品を選んだほうが良いんです。
有機栽培に使われるのは有機肥料、油粕や米ぬか、動物の糞、魚の粉末、貝殻などをブレンド発酵させた自然な肥料です。
有機肥料は野菜の栄養になるだけでなく、微生物が豊富で豊かな土が生まれるメリットもあります。
うまみ成分のアミノ酸も土に増えるので、出来上がる野菜のうまみが濃くなる事も期待できるんですよ。
ただし、有機肥料は扱いが難しく、特別な知識がある農家さんしか扱えません。
土が肥えるのも野菜が育つのにも時間がかかりますし、オーガニック農法はとても難しいんですね。
なので、長く続くオーガニック農家さんは腕が良く、おいしい野菜を作る農家さんだと言えます。
有機栽培のルールは農林水産省が決めており、基準をクリアした野菜がオーガニックとして認められます。
農林水産省のルールが守れているか、認定機関が客観的な目で育て方のチェックも行うんですね。
審査に合格したオーガニック野菜は、有機JASマークをつけて売る事ができます。
お店で「オーガニックの野菜を選びたいな」と思った時も、マークを見て選べば間違いありません。
有機JASマークは全国共通なので、とてもわかりやすい表示と言えます。
全国共通の表示マークが無い無農薬の農作物に比べると、有機栽培のほうが断然見つけやすいんですね。
しかし良い事づくめに見えるオーガニック栽培ですが、誤解されている部分もあります。
実はオーガニック=完全無農薬ではないんです。
どういうこと?と思った人は、次で有機栽培と農薬について説明するので、ぜひ読み進めて下さいね。
実は、安全と農薬の効果を両立させる方法がとられているんですよ。
えっ、オーガニックは完全無農薬じゃないの?と思われるかも知れませんね。
実は農林水産省が選び抜いた安心な天然由来の農薬を使い、 害虫や病気を安全に防いでいるんです。
ただし、どの農薬もサクッと自然分解され、土や作物を汚さないものばかりです。
虫や病気をきちんと防いでいるので、オーガニックの野菜は完全無農薬よりも質が良いと言えます。
でも、農薬と聞いたら安全と言われてもちょっと怖い・・・と思う人も多いかもしれません。
オーガニックではどんな農薬が許可されているのか、チェックしましょう。
ここまで説明したとおり、有機栽培の野菜はこう育てる事、という決まりは農林水産省が決めています。
使って良い農薬の種類や量も、農林水産省がきっちりと決めているんですね。
どの農薬をいつ使ったかも審査機関がチェックするので、こっそり化学農薬を使うなんて事はできません。
安全な薬品を安全な量で、国がしっかり管理しているのもオーガニック食品の安心なポイントです。
許可されている農薬を見ると「えっ、これも農薬なの?」という成分ばかりなんですよ。
作物も人間と同じ生き物なので、ウイルスに感染して病気になる事があります。
それを防ぐ農薬を殺菌剤といい、作物を枯らす病原菌を退治してくれるんですね。
オーガニック栽培で認められている殺菌剤は銅や硫黄など、人体に無害な成分ばかりです。
銅は錆びた時に出る緑青が毒、という噂が広がりましたが、実は毒ではありません。
体に良いミネラルとして、銅を含むサプリメントも発売されているくらいなんですね。
硫黄も温泉に含まれる成分で、その殺菌作用で傷や荒れをケアする力があります。
人体につけて安全な成分でも、作物の病気を防ぐ事ができるんですね。
作物を食べたり枯らしてしまう害虫も、オーガニック栽培の天敵です。
この場合は油を畑に撒き、虫の呼吸を止めて退治する方法がとられます。
殺虫剤というとすごく体に悪いイメージですが、ただの油でも虫が退治できるんですね。
油分は肥料にも含まれるので、害なく土で分解されます。
そしてちょっと意外ですが「害虫を食べる別の虫」も農林水産省では農薬として扱います。
これを天敵農薬と呼び、自然にいる虫を増やして畑に放し、害虫を食べさせるんですね。
もともと野山にいる種類の虫なので、生態系を壊さない方法です。
また、害虫のメスが出す匂いを人工的に作り、畑のあちこちに置いておく農薬も有効です。
混乱したオスはメスを探せなくなり、害虫が増えにくくなるんですね。
どちらも作物や土にふりかけない農薬なので、環境や野菜を汚染しません。
農薬と聞いてドキッとした人も、中身を知ると「なーんだ!」という感じですよね。
全く農薬を使わないより、こういった自然の力を利用する農薬を使ったほうが野菜が上手く育ちます。
自然の力をよく研究して上手に借りるのが、オーガニックの農薬なんですね。
では最後に、無農薬よりオーガニックを選ぶべき理由をまとめたいと思います。
この3ポイントを見る限り、選ぶならやっぱりオーガニックなんですね。
まず、オーガニックは国が決めた全国共通の有機JISマークがあります。
スーパーでも通販でも輸入品でも、ひと目で安全なオーガニック食品が見つけられます。
ちゃんとオーガニックの基準を守っているか、審査機関が厳しくチェックしているのも安心ですね。
科学肥料や遺伝子組換えも禁止なので、環境を汚さない農業が叶うのもオーガニックの魅力です。
天然由来の農薬で虫や病気を防ぐので、完全無農薬より野菜がよく育つのも良いですね。
そもそも、無農薬という言葉は基準が曖昧なので、国によって表示が禁止されています。
「無農薬って良さそう!」と飛びつくより、まずはちょっとだけ冷静になりましょう。
安全性や品質を考えるなら、断然オーガニックを選ぶほうが良いんですね。